2012年05月25日

チッチとミーコ

日が暮れてしばらくすると
あいつが黒い箱からゆっくり
ゆっくり降りてくる。そして
おれを見つけると、決まって
『チッチ』と舌打ちしやがる。

舌打ちをした後あいつは決まって
『ミーコ』と言っている。どうやら
おれに付けた名前のようだ。
だけど、おれはおれであって
ミーコではない。絶対違う!

だけど何でおれがミーコなんだ。
ミーコ顔でもしてるんだろうか。
そんなヘンテコな名前はやめてくれ。
付けるならもっと気の利いた
英語の名前を付けてくれよ。

しかしこのままでは悔しいな。
そうだ、おれもあいつに変な
名前を付けてやろうじゃないか。
何にしようかな。やっぱり
チッチと言うからチッチがいい。

あ、チッチが帰ってきた。
いかん!見つかってしまった。
『ミーコ、ミーコ』と近づいてくる。
「馬鹿チッチ、糞チッチ。どっか行け。
ミーコなんて二度と呼ぶな!」

おれは声に出して言った。
間違いなくチッチは馬鹿だ。
おれの言うことがわかってない。
あっそこまで来た。わっ満面の笑みだ。
「失せろチッチ。気持ち悪い!!」
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2012年05月24日

呪文

ぼくは知っている、
この人をうまく動かすと
何もかもがうまくいくことを。
だけどこの人を動かすには
ある呪文が必要になってくる。
この人は朝晩就寝時問わず
常にひねくれている人だから
そのひねくれを取り除く
強い強い呪文が必要になってくる。
おそらくそれは誰もが知っている
簡単な言葉なのだと思う。
だからいつでも唱えられるのだ。
うまくその呪文を見つけた人は
うまくこの人を動かして
莫大な利益を得ているという。
だけどぼくはいまだにそれを
見つけられないでいる。
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2012年05月23日

生死の呼吸

何かことが終わる時は
小説の最終章のような
自分勝手な括りはなくて
ドラマの最終回のような
仰々しい予告もなくて
実にあっさりと自然に
終わっていくものだ。

ぼくが病院を好まないのは
勝手な括りを示してみたり
最終回の予告をしてみたり
迷惑至極な存在だからだ。
この世あの世を意識せず
あっさりゆったり気持ちよく
生死の呼吸をぼくはしたい。
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2012年05月22日

前世の精算

一人の人間として大人として
いろんな出来事と格闘しながら
いろんな人と出会いながら
ぼくはこの世で生活している。
これまでぼくはそう思っていた。
だけどそれは勘違いだった。

実はまだぼくは胎児で、今は
まだ母親のお腹の中にいるのだ。
勘違いに到ったわけは
前世を精算する過程でいったん
蘇る記憶を胎児のぼくが
現実だと捉えていたことによる。

だからもう同じ記憶が
二度と蘇ることはない。
あの出来事も、あの人のことも
すべてこれで終わるのだ。そして
前世の精算が終わった瞬間に
ぼくは次の世の光を見るのだ。
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2012年05月21日

いいかげんな性格

いいかげんな性格なくせに
真理を追求したりしているから
あなたに無理を感じてしまう。
あなたの今のその姿は
あなたが昔追求していた
小さな小さなギャグに過ぎない。
授業中に笑いを取ろうと
突然大声上げたり歌ったり
そんな類いに過ぎないんだ。
本当に真理を追究するなら
小難しい本に書いてあることを
受け売りするのではなくて、
いいかげんな自分の性格を
掘り下げてみることから
始めてはどうだろう。
それが一番手っ取り早いし
何よりあなたの真理だからだ。
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2012年05月20日

自転車女

女はゆっくり自転車こいで
信号渡ってケーキ屋に入る
十数分のち店内音楽を従えて
箱を片手にした女が出てくる
女はそれを自転車に乗せ
信号渡って今来た道を
ゆっくりゆっくり戻っていく

日差しの強さを目立たせる
少し冷たい風が吹いている
風は自転車女にとって
優しいのか辛いのか
カゴのケーキを見る限りでは
そこに愛が感じられ
優しい風だと思ってしまう
ただ無表情に走っている
女の顔からそれは読めない
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2012年05月19日

黄身色ろまん

どこまで青で描きましょうか
どこから赤を使いましょうか
緑が植物なんてありふれてます
茶は曖昧に使いましょう
わかってます。わかってますよ
ちゃんとメインはあなたのあの
大好きである黄身色を使いますよ

ああ、そういえば
黄緑という色がありましたね
黄土という色もありましたね
黄金という色だってありますよね
どれも元はあなたが大好きである
あの黄身色の仲間なんですね
だからあなたの潤んだ瞳の色も
あなたの癖のある髪の毛の色も
あなたの沈みがちな心の色も
みんなみんな黄身色にしましょう
それでぼくも救われるのですから
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2012年05月18日

坂を上る

キュンとなった坂を上る
ペダル漕ぐときついので
自転車押して歩いて上る
うすい雲が張った空から
紫外線情報が降りそそぎ
かるく顔が赤らんでいる
体はその条件に反応して
ジワッと汗が滲んでいる
とはいえ少し冷たい風が
朝方から吹いているので
タラタラ滴る程でもない

右手の屋根にネコがいる
前世のエサを夢見ている
向かいの屋根に鳥がいる
エデンの頃を夢見ている
鼻歌交じりの工事の親父
なぜか小指が立っている
日傘さした買い物婆さん
彼女の小指も立っている
とはいえ二人は赤の他人
いつも坂道の風景だよと
雲の上でお天道様が笑う
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2012年05月17日

船ランランと

今に心が弾んでいるから
船ランランと進んで行く
もう一つ水色を加えながら
船ランランと進んで行く

卑怯な男にガツンと言って
船ランランと進んで行く
少女マンガのヒロインたち
船ランランと進んで行く

白塗り霊柩車が走っている
船ランランと進んで行く
波に酔ったカモメを乗せて
船ランランと進んで行く

昔ほどではないけれど
船ランランと進んで行く
丸イスの前の長いカバン
船ランランと進んで行く

円墳ドライブ風が吹く
船ランランと進んで行く
隠さないで言ってみると
船ランランと進んで行く

今に心が弾んでいるから
船ランランと進んで行く
もう一つ水色を加えながら
船ランランと進んで行く
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2012年05月16日

求めること

求める理想が高すぎるから
なかなか人生が絡まない。
求める希望が多すぎるから
なかなか人生が微笑まない。

求める夢が複雑だから
なかなか人生が定まらない。
求める人が遠すぎるから
なかなか人生がなじまない。

いつからそうなったのか
覚えてないが、気がつけば
青春の抜けない男になっていて
ぼくはこの世をさまよっている。

求める音程が高すぎるから
なかなか人生が歌わない。
求めることを求めているから
なかなか人生が進まない。
posted by 皆岡紳太 at 02:00 | Comment(0) | TrackBack(0) | 詩風録 | 編集






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